KNACIT 知見 / 測定ノート

AIに、ある会社の経営課題を6回聞いた

結論から書きます。AIの答えは、ほとんど合っていました。 参考リンクも示されました。それでも、どの主張が何を根拠にしているかは分からず、 合っているかどうかは、こちらが1件ずつ調べ直して、はじめて分かりました。

実施条件 使用したAI:Gemini 3.6 Flash(無料版・思考モードON)/実施日:2026年8月21日/ Web検索を有効にした状態毎回あたらしいチャットで開始/2種類の質問を各3回、計6回
対象 山口県の印刷会社1社(非上場)。社名は伏せています。公開情報のみを使用し、同社への取材は行っていません。

投げた質問

工夫していません。ふつうに聞ける文にしました。そして「もっとちゃんと聞けばいいのでは」を潰すために、公式サイトを渡した版も測っています。

質問A ── ふつうに聞いた(3回)

株式会社〇〇(山口県〇〇市・印刷業)の経営課題を教えてください。

質問B ── 公式サイトを渡した(3回)

株式会社〇〇(山口県〇〇市・印刷業)について、
  公式サイト https://... も見たうえで、経営課題を教えてください。

数えた結果

A・Bとも3回分の合計です。数え方は、このページの下に全部書いてあります。

数えたものA:ふつうに聞いたB:サイトを渡した
主張の総数2432
示された参考リンク30
どの主張がどの出典かの対応00
「わからない」と書いた項目00

Aでは参考リンクが3件示されました。公式サイト・県の公開ページ・企業ディレクトリの3つです。
ただし24の主張のうち、どれがどの出典に基づくのかは示されていません。

Bでは0件でした。公式サイトのURLを渡したのに、「ウェブサイトにも記載されている」と何度も書きながら、どのページかは一度も示されませんでした。

そして「わからない」はA・Bとも0件。56の主張すべてが、言い切りの形で出てきています。

分かったこと

数えた結果と、1件ずつ調べ直した結果から。

1. 出典は示された。ただし対応は示されない

参考リンクが並んでいることと、その主張がそこに書いてあることは別です。 読み手は、どの記述を確かめるためにどれを開けばいいのか分かりません。

2. 示された出典に書いてあることが、答えから抜けていた

支店の一覧が6拠点のうち4つしか挙がっていませんでした。 抜けた2つは、AI自身が示した参考ページに載っていました。 情報が無かったのではなく、示した出典にあるのに落ちています。

3. 公式サイトを渡すと、課題ではなく強みを語り始めた

Bの回答から、そのまま引きます。

「非常に信頼性の高い経営を行っています」/「素晴らしい取り組みです」/「非常に先進的です」/ 「時代の変化に先手を打った経営を行っている印象」/「モデルケースとなり得る」

「経営課題を教えてください」と聞いた答えです。 会社が自分で発信している内容を渡すと、それが評価として返ってきました。

4. 情報を足しても、出てくる課題は同じだった

A(サイトなし)B(サイトあり)
ペーパーレス化ペーパーレス化
人口減少・市場縮小人口減少・市場縮小
人材確保人材確保
付加価値化・脱印刷付加価値化・脱印刷

増えたのは会社紹介の精度でした。自社開発のシステム名、取得している認証、対応言語――そうした固有の情報は明らかに増えています。 でも、挙がる課題の中身は変わりませんでした。

1件ずつ、調べ直しました

具体的な記述を、公開情報で確認しました。判定は「調べ直して初めて分かった」ものです。

AIが書いたこと確認した結果
業界団体の環境認定を受けている本当だった
認定団体の公開名簿で確認
小学校就学前までの短時間勤務制度がある本当だった
県の公開ページで確認(利用実績ありの記載も)
育児・介護の相談窓口を設置している本当だった
同上
複数の専用工場を持つ本当だった
公式サイトで確認
仕事と家庭の両立宣言をしている本当だった
公式サイトで確認
価格転嫁について明確に発信している本当だった
公式のニュースリリースで確認
昼夜問わない生産体制本当だった
示された出典に実際に記載
県の制度に登録している(制度名を明記)制度名が不正確
実在する制度だが、正式名称と違う
社名の表記誤り
3回のうち1回、「株式会社」の位置が前後で入れ替わっていた
支店の一覧不完全
実際は6拠点。うち2つが抜けていた抜けた2つは示された出典に記載あり

AIは、間違っていませんでした。ほとんどが事実でした。

問題はそこではありません。どの主張が何を根拠にしているのかが示されないので、合っているかどうかを、こちらが1件ずつ調べ直すまで判断できなかったことです。

そして調べ直した結果、2件の誤りが見つかりました。社名の「株式会社」の位置と、支店の欠落。
どちらも、主張と出典が結びついていれば、開いた瞬間に分かるものでした。

私たちのやり方だと、どう変わるか

私たちも、最終的には課題を出します。ただしそれは、いくつかの段階を踏んだ最後です。

最初に作るのは、事実だけを書いた1枚(外形カード)です。この段階では、課題も見立ても書きません。

 AIに聞いた場合外形カード(最初の1枚)
出す内容いきなり課題事実だけ。課題はまだ出さない
出典参考は示すが、どの主張の根拠かは示さない記述ごとに出典を付ける。付かないものは書かない
埋まらない項目言い切る「不明」と書く
仮説の置き場所同じ答えの中に混在別ファイルに封をする

課題が出てくるのは、現場で話を聞いて、この1枚と突き合わせたあとです。

先に課題を出さないのは、出した瞬間に、現場での聞き方が変わってしまうからです。「これが課題だ」と決めて現場に行くと、それを確かめに行くだけになります。

なぜ仮説に封をするのかは、クロス分析とは何かに書いています。

ご自身の会社で、試してみてください

読むより、1回試すほうが早いと思います。

この文をコピーして、会社名を入れてください

株式会社〇〇(都道府県・市区町村・業種)の経営課題を教えてください。

答えが出たら、4つだけ確認してみてください。

  1. 出典のURLは、いくつ付いていますか
  2. そのURLを開いて、本当にそう書いてありますか
  3. 「わかりません」と書いた項目は、ありますか
  4. あなたの会社の実情と、合っていますか

そして最後に――
その答えの中に、あなたの現場の方が実際に言っていることは、入っていましたか。

数え方(このページの数字の出し方)

数え方の定義を見る

主張1つの数え方

箇条書きの1項目を1主張とします。入れ子になっている場合はいちばん下の階層を数えます。地の文で書かれている場合は、事実を述べた1文を1主張とします。

「示された参考リンク」と「対応」

回答とともに提示されたURLの数を「参考リンク」として数えます。そのうえで、個々の主張に対して「この記述はこのURLに基づく」と示されているものを「対応」として別に数えます。一覧で並んでいるだけの場合、対応は0件となります。

確認の仕方

示されたURLを実際に開き、その主張がそこに書かれているかを見ました。示されていない主張については、公開情報を独立に探しました。確認に使ったのは、業界団体の公開名簿、県の公開ページ、企業の公式サイトです。

確認できなかったもの

示された出典ページの一部は、こちらの環境で正しく読み取れませんでした。そこから読んだ内容は、このページの判定に含めていません。

AIの回答の全文を見る(社名のみ伏せ字)

1回目

〇〇印刷株式会社は、主要自治体や地場大手企業との安定した取引基盤を持つ一方で、印刷業界全体の構造変化に伴い以下の経営課題に直面しています。

  • ペーパーレス化に伴う「紙印刷」需要の縮小
  • 原材料・エネルギーコスト高騰への対応
  • 総合コミュニケーション支援(デジタル領域)への移行
  • 新経営体制下での組織改革と挑戦
  • 地域人口減少に伴う市場縮小と広域営業の強化

2回目 ※社名の表記が1回目と入れ替わっている

株式会社〇〇印刷は、主要顧客である自治体や地元企業からの受注基盤を持つ一方、以下の経営課題を抱えています。

  • 印刷物の減販リスク/脱・印刷依存の事業モデル構築
  • コスト高の転嫁/生産効率の極大化
  • 地方における採用難/就業環境の継続改善
  • 拠点の生産性向上/環境・品質での差別化

3回目 ※ここだけ具体的だった

「同社の公式発表や公的機関での登録情報などから」として、4点が挙げられました。

  • 原材料費・労務費の高騰と「適切な価格転嫁」
  • 「短納期・高品質」体制の維持と効率化(複数の専用工場に言及)
  • 人材確保に向けた職場環境の整備(県の制度・短時間勤務制度・相談窓口に言及)
  • 環境負荷の低減と多様化する顧客ニーズへの対応(環境認定・オンデマンド印刷に言及)

質問B(公式サイトを渡した)1〜3回目

3回とも、次の4点前後にまとまりました。

  • 印刷需要の構造的な減少と「脱・印刷」への転換
  • 地域密着企業としての市場縮小と、地域外への展開
  • デジタル領域・自社開発システムを軸とした収益基盤の拡大
  • 人材の確保・育成と働き方改革/環境対応と収益性の両立

いずれの回も、公式サイトに掲載されている取り組み(自社開発システム、各種認証、多言語対応など)を挙げながら、それを強みとして評価する記述が繰り返し現れました。参考リンクは3回とも示されていません。

※ 社名・所在地・工場名・支店名・システム名など、会社が特定される固有名詞は伏せ字または一般名詞に置き換えています。それ以外は回答のままです。

今の段階を、正直に書いておきます

この測定

6

回。2種類の質問を各3回、投げた結果です

手法の検証テスト

2

ケース完了。手順が最後まで通ることを確認済み

実在の企業での診断

0

件。ここがまだ空です

この測定は、公開情報だけを使ったものです。

現場に入って話を聞く部分は、まだ実在の企業で行えていません。分析の手順は組み上がっていますが、 出てきた結論が本当に当たっているかどうかは、実在の現場でしか測れません。

この欄を「0」のまま出しているのは、そこを曖昧にしたくないからです。埋まったら、そのまま書き換えます。

いま探しているのは、30分、現場の話を聞かせていただける方です。契約ではありません。無料です。 結果が的外れになる可能性があります。むしろ「そこは違う」と言っていただけることが、この段階では一番ありがたいフィードバックです。

AIには、
あなたの現場がありません。
AI does not have
your shop floor.

外から見える情報だけでは、ここまでしか分かりません。現場の声と突き合わせてはじめて見えるものを、無料診断で一緒に確かめませんか。 Publicly visible information only gets you this far. In a free diagnosis, let's put it up against what your own floor actually says.